霜風 地を捲いて 菊に姿無し
清・趙執信
秋暮吟望
秋暮の吟望
小閣高棲老一枝 閑吟了不為秋悲
寒山常带斜陽色 新月偏明落葉時
煙水極天鴻有影 霜風捲地菊無姿
二更短燭三升酒 北斗低横未易窺
小閣高棲 老一枝
小閣の高棲 一枝老い
閑吟 了不為秋悲
閑吟 了に秋の為に悲しまず
寒山常带 斜陽色
寒山 常に带ぶ 斜陽の色
新月偏明 落葉時
新月 偏に明らかなり 落葉の時
煙水極天 鴻有影
煙水(靄たつ水面) 天を極めて 鴻に影有り
霜風捲地 菊無姿
霜風 地を捲いて 菊に姿無し
二更短燭 三升酒
二更の短燭(燃え尽きそうな蠟燭) 三升の酒
北斗低横 未易窺
北斗 低く横たわり 未だ窺うに易からず
吟望(詩に歌う眺め)
小閣(二階建ての小さな家)
閑吟(静かに詩歌を口ずさむ)
了不(まったく~しない)
寒山(冬枯れの山)
斜陽(夕日)
煙水(靄が立ちこめる水面)
極天(大空の続く限り)
霜風(霜の気を帯びた風)
二更(現在の午後十時前後)
短燭(燃え尽きそうな蠟燭)
三升(多量の酒、清代では約3L)
北斗(北斗七星)
【訓読】秋暮の吟望
小閣の高棲 一枝老い
閑吟 了に秋の為に悲しまず
寒山 常に带ぶ 斜陽の色
新月 偏に明らかなり 落葉の時
煙水 天を極めて 鴻に影有り
霜風 地を捲いて 菊に姿無し
二更の短燭 三升酒
北斗 低く横たわり 未だ窺うに易からず
【和訳】秋暮の眺めを歌う
二階より、枝の枯れるのを見る、
口ずさむ歌は、秋の悲しみのためではない。
冬枯れの山は、たえず夕日に照らされ、
落葉した木々のすき間に、月が顔を出す。
川面に靄が立ちこめるなか、天の果てまで鴻の影を追い、
大地を巻き上げる寒風が、菊を残らず枯らしていく。
午後十時頃、蠟燭は消えそうになり、三升の酒が空く、
北斗七星が低く垂れて、部屋からは見えそうもない。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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