南宋・陸游
舎傍晩歩
蒲団 初起定
蒲団 初めて起きて定まり
藤杖 偶閑行
藤杖 偶たま閑かに行く
鳥語 如相命
鳥の語るや 相命ずるが如く
魚浮 忽自驚
魚の浮くや 忽ち自ら驚く
麦苗 経雨緑
麦苗 雨を経て緑なり
楓葉 得霜赬
楓葉 霜を得て赬なり
野老 淳風在
野老 淳風在り
悠然 不送迎
悠然として 送迎せず
舎傍(家の周辺)
晩歩(夕方の散歩)
蒲団(ガマの葉で作った敷物)
藤杖(フジの蔓でこしらえた杖)
鳥語(鳥の鳴き声)
魚浮(魚が泳ぐ)
麦苗(ムギの苗)
赬(赤色)
野老(田舎の老人)
淳風(純朴な習俗)
悠然(ゆったりとしているさま)
夕方の散歩
敷物より起き上がり、
藤の杖を頼りに散歩に出る。
鳥はまるで私に命令するように鳴き、
魚は何かに驚いて跳ねているようだ。
麦の苗は雨に洗われて緑を濃くし、
楓(ふう)の葉は霜が降りていっそう赤色を増す。
泰然自若として送り迎えさえしない。
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