晩唐・于武陵
友人南遊して回らず、因りて寄する有り
相思春樹緑千里亦依依
鄠杜月頻満 瀟湘人未帰
桂花風半落 煙草蝶双飛
一別無消息 水南車跡稀
相思 春樹緑
相思 春樹緑なり
千里 亦依依
千里 亦た依依たり(なごり惜しい)
鄠杜 月頻満
鄠杜(中国北方) 月 頻りに満ち
瀟湘 人未帰
瀟湘(中国南方) 人 未だ帰らず
桂花 風半落
桂花(モクセイの花) 風 半ば落ち
煙草 蝶双飛
煙草(靄たつ草原) 蝶 双び飛ぶ
一別 無消息
一たび別れて 消息無く
水南 車跡稀
水南 車跡稀なり
南遊(南方に旅に出る)
寄(遠くにいる人にものを送る)
相思(相手のことを思う)
春樹緑(春の樹木が緑を増す)
千里(遠い距離。一里は600m)
依依(なごり惜しく思うさま)
鄠杜(鄠県と杜陽県。中国北方の象徴)
瀟湘(瀟水と湘水。中国南方の象徴)
桂花(モクセイの花)
煙草(靄の立ちこめる草原)
無消息(便りがない)
水南(水郷地帯の南方)
車跡(車輪の跡)
【訓読】友人南遊して回らず、因りて寄する有り
相思 春樹緑なり
千里 亦た依依たり
鄠杜 月 頻りに満ち
瀟湘 人 未だ帰らず
桂花 風 半ば落ち
煙草 蝶 双び飛ぶ
一たび別れて 消息無く
水南 車跡稀なり
【和訳】友人は南方に出かけて帰らない、そこで詩を贈る
君のことを思うと、春の木々は緑を増し、
遠く離れていてもなごりは尽きない。
北方の鄠杜付近の月は、幾度も満ち欠けを繰り返し、
南方の瀟湘へ出かけた人は、戻ってこない。
モクセイの花は、秋風によって半ば散り落ち、
靄の立ちこめる草原では、二羽の蝶が飛び交う。
一旦別れてしまうと、その後の便りもなく、
水郷の南に、軌跡を追うこともできない。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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