中唐・王建
十五夜に月を望み、杜郎中に寄す
中庭地白樹棲鴉 冷露無声湿桂花
今夜月明人尽望 不知秋思在誰家
中庭地白 樹棲鴉
中庭 地白く(地面が月光で白く映る)して 樹に鴉棲み
冷露無声 湿桂花
冷露 声無くして 桂花(モクセイの花)を湿す
今夜月明 人尽望
今夜 月明 人尽く望む
不知秋思 在誰家
知らず 秋思(秋のもの思い) 誰が家にか在る
十五夜(中秋の夜。陰暦8月15日)
望月(中秋の夜には月を望む風習があった)
杜郎中(郎中職にあった「杜」という人物)
地白(地面が月光を浴びて白く映る)
冷露(秋季の冷たい露)
桂花(モクセイの花。モクセイ科の常緑樹)
不知(「不知」と「誰家」とが呼応する構文。疑問を強調する)
秋思(秋のもの思い)
誰家(だれ。どこ)
※月を望むということは、遠く離れている家族や友人も「同時に月を見ている」という発想がある。遠く離れ離れになっている人同士が「月を媒介に一つになる」という考え方である。
【訓読】十五夜に月を望み、杜郎中に寄す
中庭 地白くして 樹に鴉棲み
冷露 声無くして 桂花を湿す
今夜 月明 人尽く望む
知らず 秋思 誰が家にか在る
【和訳】十五夜に月を見て、杜郎中に送る
中庭は月光を浴びて白く反映し、烏が木に宿る、
音もなく冷たい露が降りて、木犀(もくせい)の花を濡らす。
十五夜の夜、家々では皆が月を望んでいるが、
誰が最も秋の思いに駆られているのだろうか。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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