中唐・柳宗元
柳州城西北隅種柑樹
柳州城の西北隅に柑樹を種う
手種黄柑二百株 春来新葉遍城隅
方同楚客憐皇樹 不学荊州利木奴
幾歳開花聞噴雪 何人摘実見垂珠
若教坐待成林日 滋味還堪養老夫
手種黄柑二百株
手ずから種う 黄柑(ミカン)の二百株
春来新葉遍城隅
春来 新葉 城隅に遍し
方同楚客憐皇樹
方に楚客(楚の屈原)の皇樹を憐れむに同じきも
不学荊州利木奴
荊州(呉の李衡)の木奴(ミカン)を利するを学ばず
幾歳開花聞噴雪
幾歳か 花を開き 雪(白花)を噴くことを聞き
何人摘実見垂珠
何人か 実を摘んで 珠を垂るるを見る
若教坐待成林日
若し 坐して林と成る日を待たしむれば
滋味還堪養老夫
滋味は 還た老夫を養うに堪えん
柳州(作者の左遷された地)
城西北隅(柳州城の北西郊外)
種柑樹(ミカンを植える)
手種(作者自らが植える)
黄柑(ミカン)
春来(春。「来」は接尾辞)
新葉(若葉)
遍城隅(城郭郊外に遍く植えられる)
楚客(楚の屈原を言う)
憐皇樹(ミカンを大事に思う)
不学(~を真似たわけではない)
荊州利木奴(「木奴」はミカンの別名)
幾歳(後年。何年か後)
聞噴雪(ミカンの白い花が開いたと聞く)
何人(誰)
摘実(ミカンを摘み取る)
垂珠(宝石を垂らしたようなミカンの実)
若教(もし、~させさえすれば。使役)
坐待(時の経過するのを焦らず待つ)
成林日(ミカンが生い茂り林となる日)
滋味(滋養になる食物)
還堪(そのうえ~できる)
養老夫(老人を養う)
【訓読】柳州城の西北隅に柑樹を種う
手ずから種う 黄柑の二百株
春来 新葉 城隅に遍し
方に楚客の皇樹を憐れむに同じきも
荊州の木奴を利するを学ばず
幾歳か 花を開き 雪を噴くことを聞き
何人か 実を摘んで 珠を垂るるを見る
若し 坐して林と成る日を待たしむれば
滋味は 還た老夫を養うに堪えん
【和訳】柳州城の西北郊外に蜜柑を植える
手ずから二百株の蜜柑を植え、
春に若葉が町いっぱいに広がる。
蜜柑を愛した楚の屈原の気持ちと同じであって、
将来の利益を目論んでの呉の李衡の真似ではない。
何年か経ち、雪が舞うように花が咲いたと耳にし、
いずれ誰かが宝石のような実を摘むことになるだろう。
蜜柑の樹が茂り、林となるまで生きることができたならば、
この滋味は、年老いた自分の命を養うことができるだろう。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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