盛唐・祖詠
江南旅情
江南の旅情
楚山不可極 帰路但蕭条
海色晴看雨 江声夜聴潮
剣留南斗近 書寄北風遙
為報空潭橘 無媒寄洛橋
楚山 不可極
楚山 極むべからず
帰路 但蕭条
帰路 但だ蕭条たり(もの寂しい)
海色 晴看雨
海色 晴れて雨を看
江声 夜聴潮
江声 夜に潮を聴く
剣 留南斗近
剣(佩剣)は南斗に留まりて近く
書 寄北風遙
書(手紙)は北風に寄せて遙かなり
為報 空潭橘
為に報ず 空潭(無人の淵)の橘
無媒 寄洛橋
洛橋(洛陽の橋)に寄するに媒(仲立ち)無し
江南(中国南方)
旅情(旅の思い)
楚山(中国南方の山)
不可極(極めることができない)
蕭条(もの寂しいさま)
海色(広い川面)
晴看雨(一方で晴、一方で雨)
江声(長江の流れる音)
夜聴潮(夜に水かさを増す)
剣(佩剣。文人が携帯したもの)
南斗(南斗六星)
書(手紙)
為報(北方の人に知らせる)
空潭(ひと気のない淵)
橘(ミカン科の常緑小高木)
無媒(仲立ちがない)
洛橋(洛陽にある橋)
【訓読】江南の旅情
楚山 極むべからず
帰路 但だ蕭条たり
海色 晴れて雨を看
江声 夜に潮を聴く
剣は南斗に留まりて近く
書は北風に寄せて遙かなり
為に報ず 空潭の橘
洛橋に寄するに媒無し
【和訳】江南の旅の思い
楚の国の山々は遠く果てしなく、
故郷への道はただもの寂しいばかり。
海と見まがう水面は、一方で晴れ、一方で雨を見るようであり、
川の流れは、潮が満ちてくるのが音で分かる。
私は剣を帯びながら、南斗の近くに留まり、
風に託して北方のはるか彼方に手紙を送る。
北方の人々に知らせたい、ひと気のない淵にある橘を、
洛陽に送り届けるにも、仲立ちをしてくれる人がいないことを。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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