東晋・陶淵明
飲酒二十首 其五
飲酒二十首 其の五
結廬在人境,而無車馬喧。
問君何能爾,心遠地自偏。
採菊東籬下,悠然見南山。
山気日夕佳,飛鳥相与還。
此中有真意,欲弁已忘言。
結廬 在人境
廬を結びて 人境(俗世間)に在り
而無 車馬喧
而も車馬の喧しき無し
問君 何能爾
君に問う 何ぞ能く爾ると
心遠 地自偏
心遠ければ 地自ずから偏なり
採菊 東籬下
悠然 見南山
悠然として南山を見る
山気 日夕佳
山気 日夕(夕刻)に佳く
飛鳥 相与還
飛鳥 相与に還る
此中 有真意
此の中に 真意有り
欲弁 已忘言
弁ぜんと欲して 已に言を忘る
結廬(家を構える)
人境(人里。俗世の人の住む場所)
車馬喧(官吏の乗る馬車の往来)
何能爾(どうしてそういられるのか。疑問)
心遠(心の持ち方が俗世間から遠い)
東籬下(東のまがきのもと)
悠然(ゆったりと)
南山(山名。江西省九江市の廬山)
山気(山の気配。山に立ち込める気)
日夕(夕刻)
此中(こうした環境の中に)
真意(本当の意味。本質)
弁(弁別する)
忘言(言葉にならない)
【訓読】飲酒二十首 其の五
廬を結びて 人境に在り
而も車馬の喧しき無し
君に問う 何ぞ能く爾るかと
心遠ければ 地自ずから偏なり
菊を採る 東籬の下
悠然として南山を見る
山気 日夕に佳く
飛鳥 相与に還る
此の中に 真意有り
弁ぜんと欲して 已に言を忘る
【和訳】飲酒詩二十首 その五
人里に家を構えるが、
訪れる人の車馬の音も聞こえない。
どうしてそのようなことが可能なのかと問えば、
心の持ち方が俗世間から遠ければ、
住む場所はしぜんと田舎も同然なのだ。
東の籬(まがき)のもとで、菊をとり、
ゆったりと南山を見やる。
山の佇まいは夕刻が最も良く、
飛ぶ鳥が連れ立ってねぐらに帰る。
こうした中にこそ自然の本質があり、
それを表現しようと試みるが、言葉にならない。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022.10-2023.3
No comments:
Post a Comment