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Monday, 11 November 2019

【原文ルビ訓読】菜根譚 前集 001-005


『菜根譚』洪自誠
前集 001-005

1
棲守道徳者、寂寞一時。
依阿権勢者、凄凉万古。
達人観物外之物、思身後之身。
寧受一時之寂寞、毋取万古之凄凉。

道徳に棲守する者は、一時に寂寞たるも、
権勢に依阿する者は、万古に凄凉たり。
達人は物外の物を観じ、身後の身を思う。
寧ろ一時の寂寞を受くるも、万古の凄凉を取ること毋れ。

道徳(どうとく)棲守(せいしゅ)する(もの)は、一時(いちじ)寂寞(せきばく)たるも、
権勢(けんせい)依阿(いあ)する(もの)は、万古(ばんこ)凄凉(せいりょう)たり。
達人(たつじん)物外(ぶつがい)(もの)(かん)じ、身後(しんご)()(おも)う。
(むし)一時(いちじ)寂寞(せきばく)()くるも、万古(ばんこ)凄凉(せいりょう)()ること(なか)れ。

2
渉世浅、点染亦浅、歴事深、機械亦深。
故君子与其練達、不若朴魯。
与其曲謹、不若疎狂。

世を渉ること浅くば、点染も亦浅く、
事を歴ること深くば、機械も亦深し。
故に君子は、その練達ならんよりは、朴魯なるに若かず、その曲謹ならんよりは、疎狂なるに若かず。

()(わた)ること(あさ)くば、点染(てんせん)(また)(あさ)く、
(こと)()ること(ふか)くば、機械(きかい)(また)(ふか)し。
(ゆえ)君子(くんし)は、その練達(れんたつ)ならんよりは、朴魯(ぼくろ)なるに()かず、その曲謹(きょっきん)ならんよりは、疎狂(そきょう)なるに()かず。

3
君子之心事、天青日白、不可使人不知。
君子之才華、玉韜珠蔵、不可使人易知。

君子の心事は、天青く日白く、人をして知らざらしむべからず。
君子の才華は、玉韜め、珠蔵し、人をして知り易からしむべからず。

君子(くんし)心事(しんじ)は、(てん)(あお)()(しろ)く、(ひと)をして()らざらしむべからず。
君子(くんし)才華(さいか)は、(たま)(おさ)め、(たま)(かく)し、(ひと)をして()(やす)からしむべからず。

4
勢利紛華、不近者為潔。
近之而不染者為尤潔。
智械機巧、不知者為高。
知之而不用者為尤高。

勢利紛華は、近づかざる者を潔しと為し、之に近づけども染まらざる者を尤も潔しとなす。
智械機巧は、知らざる者を高しと為し、之を知れども用いざる者を尤も高しと為す。

勢利(せいり)紛華(ふんか)は、(ちか)づかざる(もの)(きよ)しと()し、(これ)(ちか)づけども()まらざる(もの)(もっと)(きよ)しとなす。
智械(ちかい)機巧(きこう)は、()らざる(もの)(たか)しと()し、(これ)()れども(もち)いざる(もの)(もっと)(たか)しと()す。

5
耳中常聞逆耳之言、
心中常有払心之事、
纔是進徳修行的砥石。
若言言悦耳、事事快心、
便把此生埋在鴆毒中矣。

耳中、常に耳に逆うの言を聞き、心中、常に心に払るの事有らば、纔かに是れ徳に進み行いを修むるの砥石なるのみ。
若し、言々耳を悦ばし、事々心に快くば、便ち此の生を把りて鴆毒の中に埋在せん。

耳中(じちゅう)(つね)(みみ)(さから)うの(げん)()き、心中(しんちゅう)(つね)(こころ)(もと)るの(こと)()らば、(わず)かに()(とく)(すす)(おこな)いを(おさ)むるの砥石(しせき)なるのみ。
()し、言々(げんげん)(みみ)(よろこ)ばし、事々(じじ)(こころ)(こころよ)くば、便(すなわ)()(せい)()りて鴆毒(ちんどく)(うち)埋在(まいざい)せん。


【原文ルビ訓読】菜根譚 前集 006-010








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