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Saturday, 19 November 2022

【范成大】次韻王浚明詠新居木犀

 

南宋・范成大

次韻王浚明詠新居木犀

王浚明(おうしゅんめい)の新居(しんきょ)の木犀(もくせい)を詠(よ)むに次韻(じいん)す

 

月窟移来有貴名 一簾金碧照東栄

鼻端入妙睡魔醒 眼底会真詩句生

日気瓏璁無奈酔 露華凌乱不勝清

君家傾国何時見 淡掃蛾眉撚夕英

 

月窟移来 有貴名

月窟(げっくつ)(月の岩穴)より移(うつ)し来(きた)りて 貴名(きめい)有(あ)り

一簾金碧 照東栄

一簾(いちれん) 金碧(こんぺき) 東栄(とうえい)(東の軒)を照(て)らす

鼻端入妙 睡魔醒

鼻端(びたん) 妙(みょう)入(いり)りて 睡魔(すいま)醒(さ)め

眼底会真 詩句生

眼底(がんてい) 真(しん)に会(あ)いて 詩句(しく)生(しょう)ず

日気瓏璁 無奈酔

日気(にっき)(太陽の気) 瓏璁(ろうそう)として 酔(よ)いを奈(いかん)ともする無(な)く

露華凌乱 不勝清

露華(ろか)(モクセイの花) 凌乱(りょうらん)として 清(せい)に勝(た)えず

君家傾国 何時見

君(きみ)が家(いえ)の傾国(けいこく)(絶世の美女) 何(いず)れの時(とき)にか見(まみ)えん

淡掃蛾眉 撚夕英

淡(あわ)く蛾眉(がび)(美しい眉)を掃(は)きて 夕英(せきえい)(夕方に咲く花)を撚(と)る

 

次韻(詩を応酬する際に、韻字の順をそのまま使用する)

王浚明(人名。伝不詳)

木犀(モクセイ)

月窟(月中の岩穴。月を指す)

移来(移植する)

貴名(貴い名前)

金碧(黄金と碧玉。モクセイの花を喩える)

東栄(東の軒)

鼻端(鼻の先)

入妙(芳香が鼻に入る)

睡魔(眠気)

眼底(眼中)

日気(太陽の気)

瓏璁(朦朧とする。ぼんやりする)

無奈(どうすることもできない)

露華(モクセイの花。露の美しさを花に喩える)

凌乱(入り乱れる)

不勝清(多くの清らかさに耐えられない)

傾国(絶世の美女)

何時(いつ)

蛾眉(蛾の触覚のような眉、美しい眉。美人を指す)

撚(摘む)

夕英(夕方に咲く花)

 

【訓読】王浚明の新居の木犀を詠むに次韻す

月窟より移し来りて 貴名有り

一簾 金碧 東栄を照らす

鼻端 妙入りて 睡魔醒め

眼底 真に会いて 詩句生ず

日気 瓏璁として 酔いを奈ともする無く

露華 凌乱として 清に勝えず

君が家の傾国 何れの時にか見えん

淡く蛾眉を掃きて 夕英を撚る

 

【和訳】王浚明が新居の木犀を詠む作に次韻する

月から移植した花には貴い名前が与えられ、

簾越しに黄金や碧玉のごとき木犀の花が東の軒に映える。

鼻先からは妙なる花の芳香が入り込んで、睡魔を消し、

目にはまことの美が見え、すばらしい詩句が浮かぶ。

太陽の気がぼおっと霞んで、酔ったようになり、

露に濡れた木犀の花が乱れ咲いて、清らかさにたえぬ風情。

君の家の美人は、いつお目にかかれるのだろうか、

淡く美しい眉を引き、夕刻に花を摘む。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Tuesday, 8 November 2022

【楊万里】舟泊呉江 三首其二

 

南宋・楊万里

舟泊呉江 三首其二

舟(ふね)にて呉江(ごこう)に泊(と)まる 三首 其の二

 

江湖便是老生涯 佳処何妨且泊家

自汲松江橋下水 垂虹亭上試新茶

 

江湖便是 老生涯

江湖(こうこ) 便(すなわ)ち是(これ)れ 老(ろう)生涯(しょうがい)

佳処何妨 且泊家

佳処(かしょ) 何(なん)ぞ妨(さまた)げん 且(しばら)く家(いえ)に泊(はく)するに

自汲 松江橋下水

自(みずか)ら松江橋(しょうこうきょう)下(か)の水(みず)を汲(く)み

垂虹亭上 試新茶

垂虹亭(すいこうてい)上(じょう) 新茶(しんちゃ)を試(こころ)む

 

舟泊(舟に宿泊する)

呉江(川の名。蘇州の南、太湖の東岸に位置する)

江湖(川と湖。転じて中央に対して地方、民間を意味する)

便是(つまり~である)

老生涯(一生)

且泊家(ひとまず陸上に宿泊する)

松江橋(呉淞江に架かる橋)

垂虹亭(北宋の頃、松江橋上に亭を移築した)

試新茶(新茶を入れる。蘇州は茶の産地)

 

【訓読】舟にて呉江に泊まる 三首 其の二

江湖 便ち是れ 老生涯

佳処 何ぞ妨げん 且く家に泊するに

自ら松江橋下の水を汲み

垂虹亭上 新茶を試む

 

【和訳】舟に乗って呉江に宿泊する 三首その二

江湖にうかぶことが、わが生涯、

良い所があれば、陸に上がって宿泊する。

呉江にかかる橋のもとの水を汲み、

垂虹亭で、新茶を淹れて飲むのも旅の楽しみ

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022. 4-9

 

Friday, 4 November 2022

【陸游】舎傍晩歩

 

南宋・陸游

舎傍晩歩

 

蒲団 初起定

蒲団(ふとん) 初(はじ)めて起(お)きて定(さだ)まり

藤杖 偶閑行

藤杖(とうじょう) 偶(たま)たま閑(しず)かに行(ゆ)く

 

鳥語 如相命

鳥(とり)の語(かた)るや 相(あい)命(めい)ずるが如(ごと)く

魚浮 忽自驚

魚(うお)の浮(う)くや 忽(たちま)ち自(みずか)ら驚(おどろ)く

 

麦苗 経雨緑

麦(ばく)苗(びょう) 雨(あめ)を経(へ)て緑(みどり)なり

楓葉 得霜赬

楓(ふう)葉(よう) 霜(しも)を得(え)て赬(あか)なり

 

野老 淳風在

野老(やろう) 淳風(じゅんぷう)在(あ)り

悠然 不送迎

悠然(ゆうぜん)として 送迎(そうげい)せず

 

舎傍(家の周辺)

晩歩(夕方の散歩)

蒲団(ガマの葉で作った敷物)

藤杖(フジの蔓でこしらえた杖)

鳥語(鳥の鳴き声)

魚浮(魚が泳ぐ)

麦苗(ムギの苗)

赬(赤色)

野老(田舎の老人)

淳風(純朴な習俗)

悠然(ゆったりとしているさま)

 

夕方の散歩

敷物より起き上がり、

藤の杖を頼りに散歩に出る。

鳥はまるで私に命令するように鳴き、

魚は何かに驚いて跳ねているようだ。

麦の苗は雨に洗われて緑を濃くし、

楓(ふう)の葉は霜が降りていっそう赤色を増す。

泰然自若として送り迎えさえしない。