北宋・曽鞏
以白山茶寄呉仲庶見貺佳篇依韻和酬
白山茶を以て呉仲庶の貺らるる佳篇に寄せ、依韻和酬す
山茶純白是天真 筠籠封題摘尚新
秀色未饒三谷雪 清香先得五峯春
瓊花散漫情終蕩 玉蕊蕭条跡更塵
遠寄一枝随駅使 欲分芳種更無因
山茶純白是天真
山茶の純白 是れ天真
筠籠封題摘尚新
筠籠(竹かご) 封題 摘むこと尚お新たなり
秀色未饒三谷雪
秀色 未だ饒かならず 三谷(多くの谷)の雪
清香先得五峯春
清香 先ず得たり 五峯(多くの峰)の春
瓊花散漫情終蕩
瓊花(珍しい花) 散漫として 情は終に蕩たり
玉蕊蕭条跡更塵
玉蕊(花のしべ) 蕭条として 跡は更に塵たり
遠寄一枝随駅使
遠く一枝を寄せて 駅使に随い
欲分芳種更無因
芳種を分けんと欲して 更に因無し(すべなし)
白山茶(白色のツバキ)
呉仲庶(人名。作者の知人)
見貺(贈られる。「見」は受身)
佳篇(優れた作)
依韻和酬(贈られた詩と同じ韻を使用して応酬する)
純白(混じりけのない白色)
天真(天与の純粋性)
筠籠(竹かご)
封題(手紙に封をして表書きを書く)
秀色(すぐれた色合い。すぐれた景色)
三谷雪(多くの谷の雪)
清香(清らかな香り)
五峯春(多くの峰の春)
瓊花(珍しい花。貴重な花。揚州の后土廟にあった)
散漫(一面に散らばるさま)
情終蕩(「情」は次句の「跡」と呼応する。「蕩」は蕩尽、なくなる)
玉蕊(花のしべ。花を指す)
蕭条(もの寂しいさま)
跡更塵(瓊花の咲いていた跡が俗塵にまみれる)
欲分(分けようとする)
芳種(花の種)
更無因(まったく~するすべがない)
※揚州土廟の「瓊花(けいか)」は、薄い黄色で芳しい香りがした。天下に二本とない樹木で、他に移植しても花は咲かなかったと言われる。
【訓読】白山茶を以て呉仲庶の貺らるる佳篇に寄せ、依韻和酬す
山茶の純白 是れ天真
筠籠 封題 摘むこと尚お新たなり
秀色 未だ饒かならず 三谷の雪
清香 先ず得たり 五峯の春
瓊花 散漫として 情は終に蕩たり
玉蕊 蕭条として 跡は更に塵たり
遠く一枝を寄せて 駅使に随い
芳種を分けんと欲して 更に因無し
【和訳】呉仲庶が贈ってくれた詩に白いツバキを返礼に送り、依韻唱和する
山茶の白さはまさに天から授けられた潔白さ、
竹かごや封題から、花は摘んだばかりであることが分かる。
すぐれた色合いは、多くの谷の雪を集めたより美しく、
清らかな香りは、五峰の春に先駆けて漂ってくる。
瓊花は一面に散り敷き、それを見ては心ついに尽き、
瓊花は散ってもの寂しく、その痕跡はいっそうわびしい。
この花の一枝を送ろうと思い、駅使に託すことにする、
花の種を分け与えようにも、そのすべがない。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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