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Friday, 9 December 2022

【杜甫】蒹葭

 

盛唐・杜甫

蒹葭

蒹葭(けんか)

 

摧折不自守 秋風吹若何

暫時花戴雪 幾処葉沈波

体弱春風早 叢長夜露多

江湖後揺落 亦恐

 

摧折不自守

摧折(さいせつ)して(くだけ折れて) (みずか)(まも)らず

秋風吹若何

秋風(しゅうふう) ()きて若何(いかん)せん

暫時花戴雪

暫時(ざんじ) (はな)(ゆき)(いただ)

幾処葉沈波

幾処(いくところ)か ()(なみ)(しず)

体弱春風早

(からだ)(よわ)く 春風(しゅんぷう)(はや)

叢長夜露多

(そう)(なが)く 夜露(やろ)(おお)

江湖後揺落

江湖(こうこ) (おく)揺落(ようらく)するも

亦恐

()(とし)(さた)たる(時節を失う)(おそ)

 

蒹葭(水草。オギとアシ)

摧折(くだけ折れる)

自守(自分自身を維持する)

若何(どうしようもできない。反語)

暫時(しばらくの間)

花戴雪(白い花をのせる。花を雪に見立てる)

幾処(何か処)

葉沈波(葉が波間に沈む)

体弱(水草は脆弱である)

春風早(春風が例年になく早く吹き、発芽を促す)

叢長(水草が群生する)

夜露多(夜露が多く宿る)

江湖(江南を指す)

揺落(枯れて揺れながら落ちる)

(歳末。転じて人生の晩生)

(時期を失う。志を得ないさま)

 

※アシは「蘆(ろ)」とも表記され、穂のついたものは「葦(ろ)」とも呼ぶ。

 

【訓読】蒹葭

摧折して 自ら守らず

秋風 吹きて若何せん

暫時 花は雪を戴き

幾処か 葉は波に沈む

体弱く 春風早く

叢長く 夜露多し

江湖 後れて揺落するも

亦たに蹉たるを恐る

 

【和訳】水草の荻(おぎ)と蘆(あし)

水草はくだかれ折られて、自身を守ることができず、

秋風に吹かれると、どうしようもできない。

しばらく水草の花が雪を頂くように白く咲いても、

幾つかの所で水草の葉が波に沈んでいる。

水草はもろく、春風がいつになく早く吹き芽を出すも、

水草は群生して、秋の夜長に露が降りる。

ここ江南では北よりも遅く落葉するが、

人生の晩年になすすべ無く終わるのを心配する。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Tuesday, 6 December 2022

【岑参】秋夕読書幽興献兵部李侍郎

 

盛唐・岑参

秋夕読書幽興献兵部李侍郎

秋夕(しゅうせき)読書(どくしょ) 幽興(ゆうきょう)ありて兵部(へいぶ)李侍郎(りじろう)(けん)

 

四十強 自憐白始

雨滋苔階緑 梧桐覆井黄

驚蝉也解求高樹 旅雁還応厭後

覧巻試穿隣舎壁 明灯何惜借

 

四十

年紀(ねんき) (さた)(つまずき)たり 四十強(しじゅうきょう)

自憐白始

(みずか)(あわ)れむ (かしら)(しろ)くして(はじ)めて(ろう)(官職)()

雨滋苔階緑

(あめ)苔蘚(たいせん)(うるお)し (きざはし)(おか)して(みどり)なり

梧桐覆井黄

(あき)梧桐(ごどう)(アオギリ)(はら)い ()(おお)いて()なり

驚蝉也解求高樹

驚蝉(きょうぜん) ()()高樹(こうじゅ)(もと)

旅雁還応厭後

旅雁(りょがん) ()(まさ)後行(こうこう)(遅れ)(いと)うべし

覧巻試穿隣舎

(かん)()て (こころ)みに穿(うが)つ 隣舎(りんしゃ)(かべ)

明灯何惜借

明灯(めいとう) (なん)()しまん 余光(よこう)()りるを

 

秋夕(秋の夕べ)

幽興(奥ゆかしい趣)

献(献呈する)

兵部李侍郎(李姓の兵部侍郎)

紀(年齢)

(つまずき。志を得ない)

四十強(四十過ぎ)

自憐(自ら同情する)

白(白髪頭)

郎(やっと「郎」の職位に就く)

蘚(こけ)

颯(払う。落とす)

梧桐(アオギリ)

覆井黄(落葉し井戸を覆う)

驚蝉(驚いて鳴くセミ)

高樹(高木)

旅雁(遠くに飛ぶガン)

行(遅れていく)

隣舎壁(隣家の壁)

明灯(明るい灯火)

何惜(惜しまない。反語)

光(余分にある光)

 

【訓読】秋夕の読書 幽興ありて兵部李侍郎に献ず

紀 たり 四十強

自ら憐れむ 白くして始めて郎と為る

雨は苔蘚を滋し 階を侵して緑なり

秋は梧桐を颯い 井を覆いて黄なり

驚蝉 也た解く高樹を求め

旅雁 還た応に後行を厭うべし

巻を覧て 試みに穿つ 隣舎の

明灯 何ぞ惜しまん 光を借りるを

 

【和訳】秋の夕べの読書、感興が湧き兵部李侍郎に献呈する

つまずきがちな半生、はや四十の年齢になっ、

白髪頭になってやっと郎官を得たことに自分でも驚く。

雨は庭の苔を潤し、忍び込んで階段を緑に染め、

秋気は梧桐を落とし、井戸を黄色に覆い隠す。

驚いて鳴く蝉はさらに高い木に飛び移り、

旅にある雁はきっと遅れをとるのを嫌うはず。

書を読み進めて、隣の家の壁に穴を開け、

遠慮なく読書に必要な明るい灯火を借りうけよう。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Monday, 5 December 2022

【李白】秋登宣城謝朓北楼

 

盛唐・李白

秋登宣城謝北楼

(あき) 宣城(せんじょう)(しゃちょう)北楼(ほくろう)(のぼ)

 

江城如画裏 山暁望晴空

両水夾明鏡 双橋落彩虹

人煙寒橘柚 秋色老梧桐

誰念北楼上 臨風懐謝公

 

江城如画裏

江城(こうじょう) 画裏(がり)(ごと)

山暁望晴空

(やま)()けて 晴空(せいくう)(のぞ)

両水夾明鏡

両水(りょうすい) 明鏡(めいきょう)(はさ)

双橋落彩虹

双橋(そうきょう) 彩虹(さいこう)()とす

人煙寒橘柚

人煙(じんえん) 橘柚(きつゆう)(さむ)

秋色老梧桐

秋色(しゅうしょく) 梧桐(ごどう)(アオギリ)()

誰念北楼上

(たれ)(おも)わん 北楼(ほくろう)(うえ)

臨風懐謝公

(かぜ)(のぞ)んで 謝公(しゃこう)(南朝斉・謝(おも)わんとは

 

宣城(地名。安徽省宣城市)

北楼(南朝斉・謝が宣城の北に立てた楼閣)

江城(長江沿いの街。宣城を指す)

如画裏(絵画の中のようである)

山暁(山の明け方)

晴空(晴れ渡った空)

両水(宛渓と勾渓の2つの川)

夾明鏡(曇りのない鏡のようである)

双橋(2つの橋。鳳凰橋と済川橋)

落彩虹(虹を渡したようである)

人煙(人が炊ぐ煙)

橘柚(柑橘の類。ミカンとユズ)

秋色(秋の気配)

梧桐(アオギリ。落葉高木)

誰念(誰も思わない。反語)

謝公(南朝斉の詩人・謝

 

【訓読】秋 宣城の謝の北楼に登る

江城 画裏の如く

山暁けて 晴空を望む

両水 明鏡を夾み

双橋 彩虹を落とす

人煙 橘柚寒く

秋色 梧桐老ゆ

誰か念わん 北楼の上

風に臨んで 謝公を懐わんとは

 

【和訳】秋に謝が宣城に建てた北楼に登って

宣城の街はまるで絵画に描かれたような美しさ、

山の明け方に晴れた空を望み見る。

二本の川が曇りのない鏡のように街を夾み、

二つの橋が七色の虹を渡したように架かる。

人の炊ぐ煙が上って、柑橘類が寒く感じられ、

秋の気配の深まりに、梧桐(あおぎり)が木の葉を落とす。

いったい誰が思い至るだろうか、未来の人が、

いま私が北楼の上で風に吹かれて、謝を懐かしんでいることを。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Wednesday, 23 November 2022

【王昌齢】送魏二

 

盛唐・王昌齢

送魏二

魏二(ぎじ)(おく)

 

酔別江楼橘柚香 江風引雨入舟涼

憶君遥在瀟湘月 愁聴清猿夢裏長

 

酔別江楼橘柚香

江楼(こうろう)酔別(すいべつ)せんとすれば 橘柚(きつゆう)(かんば)

江風引雨入舟涼

江風(こうふう) (あめ)()き (ふね)()りて(すず)

憶君遥在瀟湘月

(きみ)(おも)えば (はる)かに瀟湘(しょうしょう)(瀟水と湘水)(つき)()りて

愁聴清猿夢裏長

(うれ)()かん 清猿(せいえん)(澄んだ猿の鳴き声)夢裏(むり)(なが)きを

 

送(送別する)

魏二(魏は姓。二は排行)

酔別(酒に酔って送別する)

江楼(長江に面した楼閣)

橘柚香(ミカンが芳しく香る)

江風(長江上を吹き渡る風)

引雨(雨を伴う)

憶君(君を思い出す)

瀟湘月(瀟水と湘水が合流する付近の月)

愁聴(悲しく耳を傾ける)

清猿(澄んだ猿の鳴き声)

夢裏長(夢の中で長く響く猿声を聞く)

 

【訓読】魏二を送る

江楼に酔別せんとすれば 橘柚香し

江風 雨を引き 舟に入りて涼し

君を憶えば 遥かに瀟湘の月に在りて

愁え聴かん 清猿の夢裏り長きを

 

【和訳】魏二を見送る

長江沿いの楼閣で、酒を仰いで別れようとすれば柑橘が芳しく、

舟に入り込む風は、川面を渡り雨を伴って涼しい。

別れて後、君を思い起こす時、瀟湘にあって月の光を浴びながら、

旅愁の夢の中に、澄み切った猿の声が長く響くのを聞いているであろう。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03