盛唐・杜甫
蒹葭
蒹葭
摧折不自守 秋風吹若何
暫時花戴雪 幾処葉沈波
体弱春風早 叢長夜露多
江湖後揺落 亦恐歲蹉跎
摧折不自守
摧折して(くだけ折れて) 自ら守らず
秋風吹若何
秋風 吹きて若何せん
暫時花戴雪
暫時 花は雪を戴き
幾処葉沈波
幾処か 葉は波に沈む
体弱春風早
体弱く 春風早く
叢長夜露多
叢長く 夜露多し
江湖後揺落
江湖 後れて揺落するも
亦恐歲蹉跎
亦た歲に蹉跎たる(時節を失う)を恐る
蒹葭(水草。オギとアシ)
摧折(くだけ折れる)
自守(自分自身を維持する)
若何(どうしようもできない。反語)
暫時(しばらくの間)
花戴雪(白い花をのせる。花を雪に見立てる)
幾処(何か処)
葉沈波(葉が波間に沈む)
体弱(水草は脆弱である)
春風早(春風が例年になく早く吹き、発芽を促す)
叢長(水草が群生する)
夜露多(夜露が多く宿る)
江湖(江南を指す)
揺落(枯れて揺れながら落ちる)
歲(歳末。転じて人生の晩生)
蹉跎(時期を失う。志を得ないさま)
※アシは「蘆(ろ)」とも表記され、穂のついたものは「葦(ろ)」とも呼ぶ。
【訓読】蒹葭
摧折して 自ら守らず
秋風 吹きて若何せん
暫時 花は雪を戴き
幾処か 葉は波に沈む
体弱く 春風早く
叢長く 夜露多し
江湖 後れて揺落するも
亦た歲に蹉跎たるを恐る
【和訳】水草の荻(おぎ)と蘆(あし)
水草はくだかれ折られて、自身を守ることができず、
秋風に吹かれると、どうしようもできない。
しばらく水草の花が雪を頂くように白く咲いても、
幾つかの所で水草の葉が波に沈んでいる。
水草はもろく、春風がいつになく早く吹き芽を出すも、
水草は群生して、秋の夜長に露が降りる。
ここ江南では北よりも遅く落葉するが、
人生の晩年になすすべ無く終わるのを心配する。
NHKカルチャーラジオ
漢詩をよむ 2022/10-2023/03
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