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Monday, 21 November 2022

【李紳】橘園

 

中唐・李紳

橘園

(きつ)(その)

 

江城霧斂軽霜早 園橘千株欲変金

朱実摘時天路近 素英飄処海雲深

懼同枳棘愁遷徙 抱馨香委照臨

憐爾結根能自保 不随寒暑換貞心

 

江城霧斂 軽霜早

江城(こうじょう) (きり)(おさ)まり 軽霜(けいそう)(はや)

園橘千株 欲変金

園橘(えんきつ) 千株(せんしゅ) (きん)(黄金色)(へん)ぜんと(ほっ)

朱実摘時 天路近

朱実(しゅじつ) ()(とき) 天路(てんろ)(ちか)

素英飄処 海雲深

素英(そえい)(白い花) (ただよ)(ところ) 海雲(かいうん)(ふか)

懼同枳棘 愁遷徙

枳棘(しきょく)(棘のある悪木)(おな)じくするを(おそ)れて 遷徙(せんし)(移植)(うれ)

抱馨香 委照臨

(つね)馨香(けいこう)(良い香り)(いだ)きて 照臨(しょうりん)(ゆだ)

憐爾結根 能自保

(なんじ)(あわ)れむ ()(むす)びて()(みずか)らを(たも)

不随寒暑 換貞心

寒暑(かんしょ)(したが)いて 貞心(ていしん)()えず

 

橘園(橘が群生する庭園)

江城(川のほとりの街。ここでは越の国)

軽霜早(早霜が降りる)

千株(多くの橘樹)

朱実(柑橘の実)

天路(遥かに遠い路)

素英(白い花)

海雲(海の彼方に出た雲)

懼同枳棘(橘が枳棘と同じに見られることを恐れる。枳棘はカラタチとイバラ)

遷徙(場所を移す)

馨香(香り)

照臨(明察する。月日が天上より照らす)

結根能自保(根をしっかり張って自生する)

不随寒暑(暑さ寒さに関わりなく)

貞心(変わらない心)

 

※橘は場所を変えると別の木になると信じられていた。カラタチとイバラは共に棘があることから悪木とされる。

 

【訓読】橘の園

江城 霧斂まり 軽霜早く

園橘 千株 金に変ぜんと欲す

朱実 摘む時 天路近く

素英 飄う処 海雲深し

枳棘を同じくするを懼れて 遷徙を愁い

に馨香を抱きて 照臨に委ぬ

爾を憐れむ 根を結びて能く自らを保ち

寒暑に随いて 貞心を換えず

 

【和訳】橘の庭園

越の地に霧が消えて、早霜が降りる頃、

千本もある庭の橘が、黄金色に変わる。

赤い実を摘む時に、天へと続く道が近くに感じられ、

白い花が舞う所に、海の彼方へ広がる雲が見える。

橘は場所を変えれば、悪木のカラタチやイバラになるという、

芳しい香りをたたえていて、天が正しく判断するのに任せる。

橘よ、お前をいつくしむ、根を地中に深く張って自生し、

寒さや暑さに関わりなく、いつも操を変えることがない点を。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

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