Amazon_01

Monday, 28 November 2022

【許渾】贈蕭兵曹先輩

 

中唐・許渾

贈蕭兵曹先輩

(しょう)兵曹(へいそう)先輩(せんぱい)(おく)

 

広陵堤上昔離居 帆転瀟湘万里余

楚客病時無 越郷帰処有鱸魚

生水郭蒹葭響 雨過山城橘柚疎

聞説携琴兼載酒 邑人争識馬相如

 

広陵堤上昔離居

広陵(こうりょう)堤上(ていじょう) (むかし) 離居(りきょ)(離ればなれに住む)

帆転瀟湘万里余

()瀟湘(しょうしょう)(瀟水と湘水)(てん)ず 万里余(ばんりよ)

楚客病時無

楚客(そかく) ()(とき) (ふくちょう)(ふくろう)()

郷帰処有鱸魚

越郷(えつきょう) ()する(ところ) 鱸魚(ろぎょ)(スズキ)()

生水郭蒹葭響

(うしお)水郭(すいかく)(しょう)じて 蒹葭(けんか)(水草)(ひび)

雨過山城橘柚疎

(あめ)山城(さんじょう)()ぎて 橘柚(きつゆう)(ミカンとユズ)()なり

聞説携琴兼載酒

聞説()くならく (こと)(たずさ)えて()ねて(さけ)()すと

邑人争識馬相如

邑人(ゆうじん) (いか)でか馬相如(ばしょうじょ)(司馬相如)()らん

 

贈(詩や物を目の前の人に贈る)

蕭兵曹(「蕭」という姓の兵曹参軍)

広陵(地名。揚州)

堤上(つつみのほとり)

離居(離ればなれに住む)

瀟湘(瀟水と湘水が合流する付近。湖南省)

万里余(一万里余り)

楚客(楚の国を旅する人)

(フクロウ。不吉な鳥と考えられた)

郷(「越」の国)

鱸魚(スズキ)

水郭(水郷)

蒹葭(水草。オギとアシ)

山城(山の中の街)

橘柚疎(ミカンやユズが所々に見える)

聞説(聞くところによると)

携琴(琴を持参して)

載酒(酒を持って)

邑人(村人)

争識(どうして分かるだろうか。反語)

馬相如(前漢の司馬相如)

 

※漢の賈誼(かぎ)は長沙に左遷された折、悪鳥(フクロウ)が部屋に入ったのを見て、自分の運命を悟ったという。

※晋の張翰(ちょうかん)は秋になって故郷の味である鱸魚(スズキ)の膾とジュンサイのスープを思い出し、官を捨てて帰郷した。

 

【訓読】蕭兵曹先輩に贈る

広陵の堤上 昔 離居す

帆は瀟湘に転ず 万里余

楚客 病む時 無し

郷 帰する処 鱸魚有り

潮は水郭に生じて 蒹葭響き

雨は山城を過ぎて 橘柚疎なり

聞説くならく 琴を携えて兼ねて酒を載すと

邑人 争でか馬相如を識らん

 

【和訳】兵曹参軍の蕭先輩に贈る

広陵の堤では離ればなれに暮らし、

はるか万里の彼方、舟は瀟湘あたりをさまよう。

楚の国を行く旅人は病を得たが、不吉な鳥のフクロウの訪れもなく、

帰るべき故郷には、美味な鱸魚が待っている。

水郷に水が増し、潮水が起こり、水草の蒹葭が音を立て、

雨が山の街を通り過ぎると、橘と柚が所々に生っているのが分かる。

聞くところによると、近所の人が琴や酒を携えて来るそうだが、

村人には、司馬相如に並ぶ貴方の人物が理解できぬとも仕方あるまい。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

No comments:

Post a Comment