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Monday, 5 December 2022

【李白】秋登宣城謝朓北楼

 

盛唐・李白

秋登宣城謝北楼

(あき) 宣城(せんじょう)(しゃちょう)北楼(ほくろう)(のぼ)

 

江城如画裏 山暁望晴空

両水夾明鏡 双橋落彩虹

人煙寒橘柚 秋色老梧桐

誰念北楼上 臨風懐謝公

 

江城如画裏

江城(こうじょう) 画裏(がり)(ごと)

山暁望晴空

(やま)()けて 晴空(せいくう)(のぞ)

両水夾明鏡

両水(りょうすい) 明鏡(めいきょう)(はさ)

双橋落彩虹

双橋(そうきょう) 彩虹(さいこう)()とす

人煙寒橘柚

人煙(じんえん) 橘柚(きつゆう)(さむ)

秋色老梧桐

秋色(しゅうしょく) 梧桐(ごどう)(アオギリ)()

誰念北楼上

(たれ)(おも)わん 北楼(ほくろう)(うえ)

臨風懐謝公

(かぜ)(のぞ)んで 謝公(しゃこう)(南朝斉・謝(おも)わんとは

 

宣城(地名。安徽省宣城市)

北楼(南朝斉・謝が宣城の北に立てた楼閣)

江城(長江沿いの街。宣城を指す)

如画裏(絵画の中のようである)

山暁(山の明け方)

晴空(晴れ渡った空)

両水(宛渓と勾渓の2つの川)

夾明鏡(曇りのない鏡のようである)

双橋(2つの橋。鳳凰橋と済川橋)

落彩虹(虹を渡したようである)

人煙(人が炊ぐ煙)

橘柚(柑橘の類。ミカンとユズ)

秋色(秋の気配)

梧桐(アオギリ。落葉高木)

誰念(誰も思わない。反語)

謝公(南朝斉の詩人・謝

 

【訓読】秋 宣城の謝の北楼に登る

江城 画裏の如く

山暁けて 晴空を望む

両水 明鏡を夾み

双橋 彩虹を落とす

人煙 橘柚寒く

秋色 梧桐老ゆ

誰か念わん 北楼の上

風に臨んで 謝公を懐わんとは

 

【和訳】秋に謝が宣城に建てた北楼に登って

宣城の街はまるで絵画に描かれたような美しさ、

山の明け方に晴れた空を望み見る。

二本の川が曇りのない鏡のように街を夾み、

二つの橋が七色の虹を渡したように架かる。

人の炊ぐ煙が上って、柑橘類が寒く感じられ、

秋の気配の深まりに、梧桐(あおぎり)が木の葉を落とす。

いったい誰が思い至るだろうか、未来の人が、

いま私が北楼の上で風に吹かれて、謝を懐かしんでいることを。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Friday, 2 December 2022

【于若瀛】山茶

 

明・于若瀛

山茶

山茶(つばき)

 

丹砂点雕蕊 経月独含苞

既足 宜雪裏嬌

 

丹砂点雕蕊

丹砂(たんさ)(紅い花粉) 雕蕊(ちょうずい)(しおれたシベ)(てん)

経月独含苞

(つき)()て (ひと)(ほう)(実)(ふく)

既足風前態

(すで)風前(ふうぜん)(たい)()

還宜雪裏嬌

()(せつ)()(きょう)(よろ)

 

山茶(ツバキ)

丹砂(紅い砂。ツバキの花粉)

雕蕊(しおれた花)

含苞(花の実)

既足(「既」は「還」と呼応して、~だけではなく)

風前態(風に吹かれるさま)

還宜(そのうえ~にもよい)

雪裏嬌(雪の中に咲く姿に愛嬌がある)

 

※「丹砂」は本来、水銀と硫黄の化合物。仙薬の原料となる鉱物。

【訓読】山茶

丹砂 雕蕊に点じ

月を経て 独り苞を含む

既に風前の態に足り

還た雪裏の嬌に宜し

 

【和訳】ツバキ

紅い花粉がしおれた蕊につき、

時を経て、ツバキの実を付ける。

風に吹かれる風情をたたえ、

また、雪の中に愛嬌を振りまく。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

【曽鞏】以白山茶寄呉仲庶見貺佳篇依韻和酬

 

北宋・曽鞏

以白山茶寄呉仲庶見佳篇依韻和酬

白山茶(しろつばき)(もっ)呉仲庶(ごちゅうしょ)(おく)らるる佳篇(かへん)()せ、依韻(いいん)和酬(わしゅう)

 

山茶純白是天真 籠封題摘尚新

秀色未饒三谷雪 清香先得五峯春

瓊花散漫情終蕩 玉蕊蕭条跡更塵

遠寄一枝随駅使 欲分芳種更無因

 

山茶純白是天真

山茶(つばき)純白(じゅんぱく) ()天真(てんしん)

籠封題摘尚新

(いんろう)(竹かご) 封題(ふうだい) ()むこと()(あら)たなり

秀色未饒三谷雪

秀色(しゅうしょく) (いま)(ゆたか)かならず 三谷(さんこく)(多くの谷)(ゆき)

清香先得五峯春

清香(せいこう) ()()たり 五峯(ごほう)(多くの峰)(はる)

瓊花散漫情終蕩

瓊花(けいか)(珍しい花) 散漫(さんまん)として (じょう)(つい)(とう)たり

玉蕊蕭条跡更塵

玉蕊(ぎょくずい)(花のしべ) 蕭条(しょうじょう)として (あと)(さら)(じん)たり

遠寄一枝随駅使

(とお)一枝(いっし)()せて 駅使(えきし)(したが)

欲分芳種更無因

芳種(ほうしゅ)()けんと(ほっ)して (さら)(いん)()(すべなし)

 

白山茶(白色のツバキ)

呉仲庶(人名。作者の知人)

(贈られる。「見」は受身)

佳篇(優れた作)

依韻和酬(贈られた詩と同じ韻を使用して応酬する)

純白(混じりけのない白色)

天真(天与の純粋性)

籠(竹かご)

封題(手紙に封をして表書きを書く)

秀色(すぐれた色合い。すぐれた景色)

三谷雪(多くの谷の雪)

清香(清らかな香り)

五峯春(多くの峰の春)

瓊花(珍しい花。貴重な花。揚州の后土廟にあった)

散漫(一面に散らばるさま)

情終蕩(「情」は次句の「跡」と呼応する。「蕩」は蕩尽、なくなる)

玉蕊(花のしべ。花を指す)

蕭条(もの寂しいさま)

跡更塵(瓊花の咲いていた跡が俗塵にまみれる)

欲分(分けようとする)

芳種(花の種)

更無因(まったく~するすべがない)

 

※揚州土廟の「瓊花(けいか)」は、薄い黄色で芳しい香りがした。天下に二本とない樹木で、他に移植しても花は咲かなかったと言われる。

 

【訓読】白山茶を以て呉仲庶のらるる佳篇に寄せ依韻和酬す

山茶の純白 是れ天真

 封題 摘むこと尚お新たなり

秀色 未だ饒かならず 三谷の雪

清香 先ず得たり 五峯の春

瓊花 散漫として 情は終に蕩たり

玉蕊 蕭条として 跡は更に塵たり

遠く一枝を寄せて 駅使に随い

芳種を分けんと欲して 更に因無し

 

【和訳】呉仲庶が贈ってくれた詩に白いツバキを返礼に送り、依韻唱和する

山茶の白さはまさに天から授けられた潔白さ、

竹かごや封題から、花は摘んだばかりであることが分かる。

すぐれた色合いは、多くの谷の雪を集めたより美しく、

清らかな香りは、五峰の春に先駆けて漂ってくる。

瓊花は一面に散り敷き、それを見ては心ついに尽き、

瓊花は散ってもの寂しく、その痕跡はいっそうわびしい。

この花の一枝を送ろうと思い、駅使に託すことにする、

花の種を分け与えようにも、そのすべがない。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Thursday, 1 December 2022

【司空図】紅茶花

 

晩唐・司空図

紅茶花

(くれない)茶花(ちゃか)

 

景物詩人見即誇 豈憐高韻説紅茶

牡丹枉用三春力 開得方知不是花

 

景物詩人見即誇

景物(けいぶつ) 詩人(しじん) ()れば(すなわ)(ほこ)るも

豈憐高韻説紅茶

(あに)(あわ)れまん 高韻(こういん)(上品な) 紅茶(こうちゃ)(紅いツバキ)()

牡丹枉用三春力

牡丹(ぼたん) ()三春(さんしゅん)(孟春・仲春・季春)(ちから)(もち)

開得方知不是花

(ひら)()るも (はじ)めて()る ()(はな)ならずと

 

紅茶花(紅いツバキの花)

景物(四季折々の風景)

見即誇(すぐれた風景を見れば称賛する)

豈憐(悲しむことはない。反語)

高韻(上品なさま)

牡丹(ボタン。花の王とされる)

枉用(むりやり~を使う)

三春力(春の力)

開得(開花できる)

方知(初めて知った)

不是(~ではない)

 

※「三春」とは、孟春・仲春・季春。

※ツバキは元々、日本および朝鮮半島原産。ふるく中国では「海石榴(かいせきりゅう)」と呼ばれたが、海からきた石榴(ザクロ)という伝承による。

 

【訓読】紅の茶花

景物 詩人 見れば即ち誇るも

豈に憐れまん 高韻 紅茶を説く

牡丹 枉げて三春の力を用い

開き得るも 方めて知る 是れ花ならずと

 

【和訳】紅の山茶

詩人は優れた風景を称賛したがるが、

雅やかな趣と言えば、山茶の花ではないだろうか。

牡丹の花は、春の力をむりやり借りているだけで、

花を開かせた所で、それは花とは言えないだろう。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03

 

Wednesday, 30 November 2022

【秦系】山中贈張正則評事

 

中唐・秦系

山中贈張正則評事

山中(さんちゅう)にて張正則(ちょうせいそく)評事(ひょうじ)(おく)

 

終年常避喧 師事五千言

流水閑過院 春風与閉門

山茶邀上客 桂実落前軒

莫強教余起 微官不足論

 

終年常避喧

終年(しゅうねん) (つね)(かまびす)しきを()

師事五千言

師事(しじ)す 五千言(ごせんげん)(『老子』のこと)

流水閑過院

流水(りゅうすい) (しず)かに(いん)(中庭)()

春風与閉門

春風(しゅんぷう) (ため)(もん)()ざす

山茶邀上客

山茶(つばき) 上客(じょうかく)(むか)

桂実落前軒

桂実(けいじつ)(モクセイの実) 前軒(ぜんけん)()

莫強教余起

()いて(われ)をして()たしむること(なか)かれ

微官不足論

微官(びかん)(下級官吏) (ろん)ずるに()らず

 

山中(山の中。隠棲の象徴)

張正則(人名。詳細不詳)

評事(官職名)

終年(生涯)

常避喧(世の喧騒を嫌う)

師事(先生として仕える)

五千言(『老子』のこと)

流水(流れる川)

過院(中庭を通過する)

山茶(ツバキ)

上客(上等な客)

桂実(モクセイの実)

前軒(前方の軒先)

莫強(無理に~させるな)

教(~させる。使役)

微官(下級官吏。謙遜の意)

不足論(論ずるまでもない)

 

※『老子』は五千余言あることから「五千言」といわれる。

 

【訓読】山中にて張正則評事に贈る

終年 常に喧しきを避け

師事す 五千言

流水 閑かに院を過ぎ

春風 与に門を閉ざす

山茶 上客を邀え

桂実 前軒に落つ

強いて余をして起たしむること莫かれ

微官 論ずるに足らず

 

【和訳】山中にて、張正則評事に贈る

生涯世の騒がしさを避けて暮らし、

『老子』に師事して、生きる指針とした。

流れる小川が中庭を通り過ぎ、

春風が門を閉ざして行った。

ツバキは上等のお客を迎え、

モクセイの実が前方の軒先に落ちる。

私を出世に急かせないで頂きたい、

ましてや下っ端役人であればなおさらだ。

 

NHKカルチャーラジオ

漢詩をよむ 2022/10-2023/03