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Sunday, 17 November 2019

【原文ルビ訓読】菜根譚 前集 021-025


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菜根譚
前集 021-025

21
家庭有個真仏、日用有種真道。
人能誠心和気、愉色婉言、使父母兄弟間、
形骸両釈、意気交流、勝於調息観心万倍矣。

家庭に個の真仏有り、日用に種の真道有り。
人能く、誠心和気、愉色婉言もて、
父母兄弟の間をして、形骸両ながら釈け、意気交々流れしめば、
調息観心に勝ること万倍なり。

家庭(かてい)()真仏(しんぶつ)()り、日用(にちよう)(しゅ)真道(しんどう)()り。
(ひと)()く、誠心(せいしん)和気(わき)愉色(ゆしょく)婉言(えんげん)もて、
父母(ふぼ)兄弟(けいてい)(あいだ)をして、形骸(けいがい)(ふたつ)ながら()け、意気(いき)交々(こもごも)(なが)れしめば、
調息(ちょうそく)観心(かんしん)(まさ)ること万倍(まんばい)なり。

22
好動者、雲雷風灯、
嗜寂者、死灰槁木。
須定雲止水中、有鳶飛魚躍気象、
纔是有道的心体。

動を好む者は、雲電風灯にして、
寂を嗜む者は、死灰槁木なり。
須らく定雲止水の中に、鳶飛び魚躍るの気象有るべくして、
纔かに是れ有道の心体なり。

(どう)(この)(もの)は、雲電(うんでん)風灯(ふうとう)にして、
(せき)(たしな)(もの)は、死灰(しかい)槁木(こうぼく)なり。
(すべか)らく定雲(ていうん)止水(しすい)(うち)に、(とび)()(うお)(おど)るの気象(きしょう)()るべくして、
(わず)かに()有道(ゆうどう)心体(しんたい)なり。

23
攻人之悪、毋太厳、要思其堪受。
教人以善、毋過高、当使其可従。

人の悪を攻むるときは、
太だは厳なること毋く、
其の受くるに堪えんことを思うを要す。
人に教うるに善を以てするときは、
高きに過ぐること毋く、
当に其れをして従うべからしむべし。

(ひと)(あく)()むるときは、
(はなは)だは(げん)なること()く、
()()くるに()えんことを(おも)うを(よう)す。
(ひと)(おし)うるに(ぜん)(もっ)てするときは、
(たか)きに()ぐること()く、
(まさ)()れをして(したが)うべからしむべし。

24
糞虫至穢、変為蝉而飲露於秋風。
腐草無光、化為蛍而燿釆於夏月。
固知潔常自汚出、明毎従晦生也。

糞虫は至穢なるも、
変じて蝉と為り、露を秋風に飲む。
腐草は光無きも、
化して蛍と為り、釆を夏月に耀かす。
固に知る、
潔は常に汚より出で
明は毎に晦より生ずることを。

糞虫(ふんちゅう)至穢(しあい)なるも、
(へん)じて(せみ)()り、(つゆ)秋風(しゅうふう)()む。
腐草(ふそう)(ひかり)()きも、
()して(ほたる)()り、(さい)夏月(かげつ)耀(かがや)かす。
(まこと)()る、
(けつ)(つね)()より()
(めい)(つね)(かい)より(しょう)ずることを。

25
矜高倨傲、無非客気。
降伏得客気下、而後正気伸。
情欲意識、尽属妄心。
消殺得妄心尽、而後真心現。

矜高倨傲は、客気に非ざるは無し。
客気を降伏し得下して、而る後に正気は伸ぶ。
情欲意識は、尽く妄心に属す。
妄心を消殺し得尽して、而る後に真心現わる。

矜高(きょうこう)倨傲(きょごう)は、客気(かっき)(あら)ざるは()し。
客気(かっき)降伏(こうふく)得下(えくだ)して、(しか)(のち)正気(せいき)()ぶ。
情欲(じょうよく)意識(いしき)は、(ことごと)妄心(もうしん)(ぞく)す。
妄心(もうしん)消殺(しょうさい)得尽(えつく)して、(しか)(のち)真心(しんしん)(あら)わる。




Friday, 15 November 2019

【原文ルビ訓読】菜根譚 前集 016-020


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菜根譚 
前集 011-015

16
寵利毋居人前、徳業毋落人後。
受享毋踰分外、修為毋減分中。

寵利は人の前に居ること毋れ、
徳業は人の後に落つること毋れ。
受享は分の外に踰ゆること毋れ、
修為は分の中に減ずること毋れ。

寵利(ちょうり)(ひと)(まえ)()ること(なか)れ、
徳業(とくぎょう)(ひと)(うしろ)()つること(なか)れ。
受享(じゅきょう)(ぶん)(そと)()ゆること(なか)れ、
修為(しゅうい)(ぶん)(うち)(げん)ずること(なか)れ。

17
処世譲一歩為高。退歩即進歩的張本。
待人寛一分是福。利人実利己的根基。

世に処るには、一歩を譲るを高しとなす。
歩を退くるは、即ち歩を進むるの張本なり。
人を待つには、一分を寛くにするは是れ福なり。
人を利するは、実に己を利するの根基なり。

()()るには、一歩(いっぽ)(ゆず)るを(たか)しとなす。
()退(しりぞ)くるは、(すなわ)()(すす)むるの張本(ちょうほん)なり。
(ひと)()つには、一分(いちぶん)(ひろ)くにするは()(さいわい)なり。
(ひと)()するは、(じつ)(おのれ)()するの根基(こんき)なり。

18
蓋世功労、当不得一個矜字。
弥天罪過、当不得一個悔字。

世を蓋うの功労も、一個の矜の字には当え得ず。
天に弥るの罪過も、一個の悔の字には当え得ず。

()(おお)うの功労(こうろう)も、一個(いっこ)(きょう)()には()()ず。
(てん)(わた)るの罪過(ざいか)も、一個(いっこ)(かい)()には()()ず。

19
完名美節、不宜独任。
分些与人、可以遠害全身。
辱行汚名、不宜全推。
引些帰己、可以韜光養徳。

完名美節は、宜しく独りにては任ずべからず。
些かを分ちて人に与うれば、以て害を遠ざけ身を全くすべし。
辱行汚名は、宜しく全くは推すべからず。
些かを引きて己に帰せば、以て光を韜み徳を養うべし。

完名(かんめい)美節(びせつ)は、(よろ)しく(ひと)りにては(にん)ずべからず。
(わず)かを(わか)ちて(ひと)(あた)うれば、(もっ)(がい)(とお)ざけ()(まった)くすべし。
辱行(じょくこう)汚名(おめい)は、(よろ)しく(まった)くは()すべからず。
(わず)かを()きて(おのれ)()せば、(もっ)(ひかり)(つつ)(とく)(やしな)うべし。

20
事事、留個有余不尽的意思、
便造物不能忌我、鬼神不能損我。
若業必求満、巧必求盈者、
不生内変、必召外憂。

事々、個の有余不尽の意思を留めば、
便ち造物も我を忌むこと能わず、
鬼神も我を損うこと能わず。
若し業は必ず満を求め、功は必ず盈を求めば、内変を生ずるにあらずば、必ず外憂を召かん。

事々(じじ)()有余(ゆうよ)不尽(ふじん)意思(いし)(とど)めば、
便(すなわ)造物(ぞうぶつ)(われ)()むこと(あた)わず、鬼神(きじん)(われ)(そこな)うこと(あた)わず。
()し、(ぎょう)(かなら)(まん)(もと)め、(こう)(かなら)(えい)(もと)めば、
内変(ないへん)(しょう)ずるにあらずば、(かなら)外憂(がいゆう)(まね)かん。




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【原文ルビ訓読】菜根譚 前集 011-015


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菜根譚 前集 011-015

11
藜口筧譌腸者、多氷清玉潔、袞衣玉食者、
甘婢膝奴顔,蓋志以澹泊明、而節従肥甘喪也。

藜口筧腸の者は、氷清玉潔多く、
袞衣玉食の者は、婢膝奴顔に甘んず。
蓋し、志は澹泊を以て明らかなるも、
節は肥甘より喪うなり。

藜口(れいこう)筧腸(けんちょう)(もの)は、氷清(ひょうせい)玉潔(ぎょっけつ)(おお)く、
袞衣(こんい)玉食(ぎょくしょく)(もの)は、婢膝(ひしつ)奴顔(どがん)(あま)んず。
(けだ)し、(こころざし)澹泊(たんぱく)(もっ)(あき)らかなるも、
(せつ)肥甘(ひかん)より(うしな)うなり。

12
面前的田地、要放得寛、使人無不平之歎。
身後的恵沢、要流得長、使人有不匱之思。

面前の田地は、放ち得て寛きことを要し、人をして不平の歎き無からしむ。
身後の恵沢は、流え得て長きことを要し、人をして不匱の思い有らしむ。

面前(めんぜん)田地(でんち)は、(はな)()(ひろ)きことを(よう)し、(ひと)をして不平(ふへい)(なげ)()からしむ。
身後(しんご)恵沢(けいたく)は、(つた)()(なが)きことを(よう)し、(ひと)をして不匱(ふき)(おも)()らしむ。

13
経路窄処、留一歩与人行、滋味濃的、
減三分譲人嗜、此是渉世一極安楽法。

経路の窄き処は、一歩を留めて人の行くに与え、滋味の濃かなるものは、三分を減じて人の嗜むに譲る。
此れは是れ、世を渉る一の極安楽の法なり。

経路(けいろ)(せま)(ところ)は、一歩(いっぽ)(とど)めて(ひと)()くに(あた)え、
滋味(じみ)(こまや)かなるものは、三分(さんぶ)(げん)じて(ひと)(たしな)むに(ゆず)る。
()れは()れ、()(わた)(いつ)極安楽(ごくあんらく)(ほう)なり。

14
作人無甚高遠事業、擺脱得俗情、便入名流。
為学無甚増益功夫、減除得物累、便超聖境。

人と作りて、甚の高遠の事業無きも、俗情を擺脱し得ば、便ち名流に入る。
学を為して甚の増益の功夫無きも、物累を減除し得ば、聖境に超ゆ。

(ひと)()りて、(なん)高遠(こうえん)事業(じぎょう)()きも、俗情(ぞくじょう)擺脱(はいだつ)()ば、便(すなわ)名流(めいりゅう)()る。
(がく)()して(なん)増益(ぞうえき)功夫(くふう)()きも、物累(ぶつるい)減除(げんじょ)()ば、聖境(せいきょう)()ゆ。

15
交友、須帯三分侠気。
作人、要在一点素心。

友に交るには、須らく三分の侠気を帯ぶべし。
人と作るには一点の素心を在するを要す。

(とも)(まじわ)るには、(すべか)らく三分(さんぶ)侠気(きょうき)()ぶべし。
(ひと)()るには一点(いってん)素心(そしん)(そん)するを(よう)す。




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